2011年11月22日 星期二

ナシヤーム ジャイナ教世界の黄金模型

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ラジャスタン州アジメールの中心街プリティヴィラージ通りにある、赤砂岩で造られた壮麗なジャイナ教寺院の中に、訪れる者をあっと驚かす、金箔で覆われた巨大な模型があります。
この寺院の正式名称は「シッダクート・チャイッターラヤ」ですが、人々は「ソーニー寺院」「ラール(赤い)寺院」「スワルナ(黄金)寺院」と呼んでいます。

寺院の創建は、商業活動で世界的に有名なジャイナ教徒ソーニー家の中心人物で、偉大な篤志家である、ラーエ・バハドゥール・セートゥ・ムールチャンド・ソーニー氏によって、1864年10月10日より始められました。カラウリイ(地名)産の赤砂岩を使い、大通りに面して「ジナーラヤ(ジナの住まう処)」があり、その裏手に「ナシヤーム」があります。

ジャイナ教は、紀元前6~5世紀頃、仏陀とほぼ同時代の人ヴァルダマーナ(マハヴィーラ)を開祖とする、徹底した禁欲主義・不殺生主義で知られるインドの伝統的な宗教の一つです。「ジナ」とは、修行を完成させた者、カルマに勝利した者という意味です。

アジメールの街は、イスラム・スーフィー聖者クワジャ・ムイヌッディン・チスティーの墓廟(ダルガーハ)があることで有名ですが、街の名前はヒンディー語で「アジャヤ・メルー」と呼ばれ、古来より、多くのジャイナ教徒が住み、商業貿易で成功し、たくさんのジャイナ教寺院を建設しました。この「ソーニー寺院」の周辺には10件ほどのジャイナ教寺院があり、それぞれ巨大な建物を擁しています。

ジャイナ教の教えでは、動植物のみならず、地・水・火・大気にも霊魂(生命)が宿り、それらの生命を守るために、特に不殺生(アヒンサー)の誓戒を説きます。この不殺生戒を根幹として、不妄語戒、不盗戒、不淫戒、無所有を加えた5つの大誓戒を厳格に守る者が出家修行者で、出家修行者は、輪廻の世界での苦悩の原因となる、あらゆるカルマ(業)の束縛・影響を除去するために、苦行と禁欲に徹し、心の汚れを浄化することに専心します。

そして、究極的な解脱の境地である「モクシャ(カルマの束縛から完全に精神が解放された状態)」「カイヴァルヤ(モクシャを悟る知恵、全知)」「シッダ(輪廻から離れて自由になる)」に達した者を、ティールタンカールと称します。仏陀と同じ時代にこの世に生まれたヴァルダマーナ(マハヴィーラ)は、24代目のティルタンカールであるとされています。つまり、ジャイナ教の開祖がこの世に誕生する前に、23人のティルタンカールが存在したのです。

ジャイナ教は、このティルタンカール(聖者)を崇拝する宗教です。教えの中には、多くの神々や天女が登場しますが、神々・天女は、超自然的力を持ってはいますが、不死ではなく、また「モクシャ」「カイヴァルヤ」「シッダ」の境地にも至っていないとされています。神々も天女も聖者(ティルタンカール、ジナ)を崇拝し讃嘆するのです。

「ナシヤーム」は、第一代ティルタンカールである、アーディナート・リシャバ・クマールが、アヨーディヤ市に誕生し、5つの奇跡的な善業を行ったのを、人々・神々が祝福し喜びに沸いている風景を、巨大な金箔張りの模型によって示したものです。「アーディ」とは創始の、第一番のという意味、「ナート」は主宰神で、「アーディナート」は創始者に対する称号です。

ラーエ・バハドゥール・セートゥ・ムールチャンド氏は、本殿の裏手に、縦横 89フィート*64フィート、高さ 92フィートの巨大な建物を作って、金箔模型を収納しました。

この金箔模型を製作する事業は、ジャイナ哲学の泰斗、パンディット・サダームク・カースリワール氏の監修のもと、ジャイプール市で1870年より始められ、約25年の歳月をかけ、優れた工芸師達の手によって完成されました。この模型作品は、最初、ジャイプール市のラームニヴァース庭園にあるアルヴァート・ホール博物館で、盛大な式典とともに展覧され、当時のジャイプール藩王、マハラジャ・サワイ・マドーシン猊下の、二度による拝謁を受ける栄誉にも浴しました。

金箔張りの大模型は、初代ティルタンカール・アーディナート・リシャバ・クマールの大宮殿を中心とするアヨーディヤ市の風景と、巨大なスメール山、13の島々と海の場面で構成されています。スメール山頂では、サウダルマ・インドラ神による、初代ティルタンカール誕生を祝う儀式の要所要所が模型で表現され、また、リシャバ・クマールの5つの善業の場面では、母親の見た16の夢や54人の神々・少女達による母親の世話などが模型で描かれています。

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(アヨーディヤ市の中心にそびえる宮殿)

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(巨大なスメール山、山頂に架けられた橋)

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(別のジャイナ教寺院の外壁に描かれた、同様の風景)

天井からは、神々の乗った飛行船「プシュパ・ヴィマーナ」が吊り下げられています。アヨーディヤ市に誕生した初代ティルタンカールを祝う為に、世界中の神々が空中に集まって来たのです。

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(スメール山頂での儀式。飛行船「プシュパ・ヴィマーナ」に乗って集まってきた神々。)

模型では、空中に浮かぶ船の中で、神々はサーランギやシタール、タブラを演奏し、歌を歌い、花を地上に散らしています。「プシュパ」とは花、華という意味で、「プシュパ・ヴィマーナ」とは、「散華をする船」という意味です。

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(飛行船の底に、不思議な光の塊が並んでいます。これが浮遊エンジンか?)

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(「プシュパ・ヴィマーナ」の上で楽器を演奏する神々。後ろ側の人はサーランギ。前側の人はシタールを演奏しているのだと思いますが・・・。)

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(「プシュパ・ヴィマーナ」から散華している神々。近くのジャイナ教寺院の壁に描かれたもの。)

「ヴィマーナ」は、例えば航空会社「バングラデシュ・ヴィーマン」の「ヴィーマン」と同じ単語で、飛行機を意味します。「ヴィマーナ」を巡っては、古代インドに飛行機製造の技術があったとされる、サンスクリット語で書かれた謎の文書(経典)があるという噂に、心を躍らされます(その梵語経典は、今から6000年昔に書かれた物らしいです)。その謎の文書を翻訳して解説した本が日本語で出版されていて、そこに出てくる解説文と図版が、この「ナシヤーム」の飛行船と同じものかどうかを、確かめる為に、カメラマンが派遣されて来ました(・・・ごくろうさまでした)。

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(「プシュパ・ヴィマーナ」 船ですが、鳥ですね。)

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(「プシュパ・ヴィマーナ」 こちらは象さんをかたどっています。)

「飛行術」は、自由自在に姿を変えて、飛行・移動する能力として、佛や菩薩の6神通力の1つに挙げられ「神足通」と呼ばれます。移動する為の「船」は必要としていませんが。

あるいは、ラーマーヤナ物語の中で、大魔神ラヴァーナが、崇拝するシヴァ神を讃嘆する為に、ランカの都からヒマラヤ山へ日々参詣していた時に、空中浮遊する飛行船「ウーラン・カトーラー」を操っていたと、されています。ラーマの后であるシーターをさらって行ったのも、この「ウーラン・カトーラー」で、でした。

「ナシヤーム」が製作され始めたのは1870年との事です。その頃「飛行機」が既にあったのかどうか分かりませんが、空飛ぶ乗物は、まだ、「船」の形をしていました。

ジャイナ教の経典には、この「ヴィマーナ」に関する細かい記述があるようです。アジメール市のその他のジャイナ教寺院には、「プシュパ・ヴィマーナ」の形やサイズ、散らされる花々の程度に関しての図表が壁に描かれている所もあります。

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(プシュパ・ヴィマーナには、サイズや形に区別があるらしい。別の寺院の内壁の図表。)

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(別の寺院の外壁に描かれた、プシュパ・ヴィマーナ。空中浮遊しながらスメール山に着地しつつあるティルタンカール(修行完成者)と、その瞑想の中に描かれた深山幽谷。)

飛行船、飛行機、空中浮揚・・・ジャイナ教寺院を訪れるが、楽しみになりました

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